五龍図巻
ごりゅうずかん
概要
陳容(ちんよう)は13世紀、南宋時代末期に活躍した文人画家です。中国南東部の海に面した地域、現在の福建省(ふっけんしょう)の出身で、特に龍を描くのを得意にしたと伝わります。龍は、雲を湧き起こし、雨を呼ぶ神獣です。このため中国では、決まった形を持たない雨雲と一体化させて、龍の変化の姿を表現することが重要であるとされてきました。歴史書によれば、陳容はその変化の姿をとらえるため、酒を飲んで酔っ払い、服装にもかまわず、手に墨を塗りたくって制作にのぞんだといいます。墨をはね散らかして雲を、口に含んだ墨を噴き出して霧を表現した、と伝わるその激しく自由な龍の図は、以後、龍を描く画家にとっての古典となりました。
この作品は、龍に呼応して波立つ水面から始まり、雲や岩の間にからみあって見え隠れする5匹の龍、水量を増して激しく流れ落ちる滝を描きます。明暗を強調した雨雲の広がり、迫力ある水の流れ、そしてそのような自然現象と一体化してうごめく龍の姿は、歴史書にいう陳容の龍の図を彷彿(ほうふつ)とさせます。巻末に押された「所斎」(しょさい)の印が、陳容の号、つまり別名をさすとも考えられています。
東京国立博物館のこの「五龍図巻」と同じ図様を含む画巻が、現在、アメリカのプリンストン大学美術館に所蔵されています。プリンストン大学美術館の作品は、合計12匹の龍を描き、8メートルを超える長大な画面を誇ります。また、このプリンストン大学美術館作品から別の場所の図様を採用した龍の画巻として、メトロポリタン美術館と、ボストン美術館の作品が知られています。以上4つの作品の関係は今後の研究の課題ですが、いずれにせよ、「五龍図巻」が、より長い画巻の一部であったことは確かのようです。
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