行草書十詩五札巻
ぎょうそうしょじっしごさつかん
概要
この作品は、元時代13世紀を代表する書家、鮮于枢(せんうすう)の詩文と5通の手紙を1巻に合わせて装丁した巻物です。
詩文は、鮮于枢が自ら新居の傍(かたわ)らに植え替えて、「支離叟(しりそう)」と名付けた松の木を題材としたものです。高さが3尺にも満たないこの松は、龍が臥(ふ)して地面に腹ばうかのような、とても奇妙な形をしており、すでに老木でありながら、翌年には枝葉が見事に生い茂り、みる者をあっと驚かせたと言います。鮮于枢は支離叟を甚だ愛でて、書画に優れた友人の趙孟頫(ちょうもうふ)に絵を、文章に優れた戴表元(たいひょうげん)に伝記を依頼して、それらを一巻にまとめました。詩文にはこの経緯を述べた序文と五言律詩(ごごんりっし)10首が記されます。
詩文の後に付される5通の手紙のうち、2通目と3通目は澄虚真人(ちょうきょしんじん)という人物に宛てたものです。いずれも鮮于枢が家族の病状について記し、薬の処方をたずねていることから、澄虚真人は医師とみられます。明時代16世紀に刊行された書の名品集『停雲館法帖(ていうんかんほうじょう)』には、同様の手紙が収められており、そこには鮮于枢が澄虚真人に、「支離叟」という松について詩10首を書き送ったことが記されます。このことから、現在この巻物に収められている詩文は、澄虚真人に送られた原本とも考えられます。手紙とともに保管され、いつしか合わせて表装され、今に伝えられたのかもしれません。繊細な書きぶりの詩文に対して、手紙の書は線が力強く、自然でいてどこか堂々とした字姿(じすがた)です。
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