竹塘宿雁図軸
ちくとうしゅくがんずじく
概要
枯れた葦(あし)の生える水辺(みずべ)に、多くの雁(かり)が集(つど)っています。首を伸ばしてあたりを見回すもの、餌(えさ)をついばむもの、羽をつくろうもの、羽毛の間に頭を埋(うず)めて眠るものなど、いろいろな角度から捉えられた様々なポーズの雁が、羽の模様、嘴(くちばし)の微妙な色合いに至るまで、細かに描かれます。その上には、葉を掌(てのひら)のかたちに広げた竹が茂り、枝を複雑に交差させた樹木が伸びています。枝先は薄い緑色で表され、そこに臙脂色(えんじいろ)の点が確認できます。この木は、春さきの梅かもしれません。画面右上には、枝にとまる尉鶲(じょうびたき)という鳥の番(つがい)が見えます。水色の頭と、明るいオレンジ色の腹が特徴的な一羽が雄、全体が淡い褐色の一羽が雌でしょう。植物と鳥たちの後ろには、水を挟んだ対岸の渚(なぎさ)が、墨で簡略に表されています。モチーフを右下に集中させる、対角線を意識した構図によって、左奥の霞(かすみ)の中に遠ざかっていく空間が暗示されます。
中国絵画の歴史において、宋時代、10世紀から11世紀は、山水画の「黄金時代」とされます。絵画という平面に、3次元の空間の広がりや奥行きを巧みに表す技術は、この時期に大いに発展しました。これを受けて、背景のない画面に植物や鳥をクローズアップで表してきた花鳥画の分野においても、奥行きのある景観の中にモチーフを自然に溶け込ませることへの関心が高まっていきます。こうして生まれた、山水画と花鳥画両方の性質を備えた絵画は、当時、「小さな景色の絵画」という意味で「小景画(しょうけいが)」と呼ばれました。本図もその一つであり、小さな画面の中に、たくさんの花鳥モチーフを緻密に描きこみつつ、自然な景観を再現することに成功した、宋時代絵画の名品といえます。
文化庁 〒602-8959 京都府京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85番4 メール:online@mext.go.jp
共同運営NII Powered by GETA (C) The Agency for Cultural Affairs