宇治川蛍蒔絵料紙硯箱〈飯塚桃葉作/安永四年〉

うじがわほたるまきえりょうしすずりばこ〈いいづかとうようさく/あんえいよねん〉

概要

宇治川蛍蒔絵料紙硯箱〈飯塚桃葉作/安永四年〉

うじがわほたるまきえりょうしすずりばこ〈いいづかとうようさく/あんえいよねん〉

漆工 / 江戸 / 関東

飯塚桃葉

東京都

江戸/1775年

(硯箱)
木製で、隅丸の長方形、被蓋造の硯箱である。蓋はやや高い甲盛りで、四周に塵居を設け,口縁は玉縁とする。内部は枠を四方に廻らした筆架形式で、中央の下水板に月に鶴を表した水滴と硯を嵌める。
蓋と身の外側は、総体金沃懸地とし、蓋甲には、画面上方に金高蒔絵で雲が棚引く様、雲間に銀金貝で三日月を配す。画面中程には、薄肉の金高蒔絵で川の流れ、その手前に河畔に生い茂る葦を表す。その前景には、高上げをした上に金の板金で、護岸のための杭が乱立する景を描く。全面に飛び交う蛍を配し、宇治川の夏の情景を表す。蛍は、蓋表と身の側面で計八三匹配する。羽や胴を銀金貝と銀蒔絵とし、光を発する尻は螺鈿で表す。頭の朱斑には朱の粉を点じる。全体の構図は、蓋甲の図様が身の長短側面に続く構成で、身の手前側短側面に「観松齋/桃葉造(花押)」の金蒔絵銘がある。
蓋裏と身の内側は、総体を、ごく粗い粉を密に蒔いた刑部梨子地とする。蓋裏には柴舟が川を下る様子を金高蒔絵で描き、身の内側には、落葉の上に羽を閉じた蛍を二六匹置く。落葉は青金を主とした高蒔絵で表す。底裏は濃梨子地である。
水滴は、銀製で鶴を象り、嘴の先と尾羽の先、胴部の水入れに孔を設ける。下水板に円形金色の金具を貼り、水滴を収めると日輪を背景に鶴が飛ぶ様子となる。蓋表の三日月と水滴の日輪により、硯箱の内外で日月の構成となる。
(料紙箱)
木製で、隅丸の長方形、合口造の料紙箱である。蓋はやや高い甲盛りで、四周に塵居を設ける。蓋と身の口縁には金製の置口を廻らす。
蓋と身の外側は、総体金沃懸地とし、蓋甲に蛍が飛び交う宇治川の景を描くが、料紙箱の蓋甲は、高上げの上から金金貝を被せた橋を大きく配した構図である。画面上方に雲が棚引く様を高蒔絵で表し、画面下方に葦と霞を描く。蛍は蓋表と四側面に二六九匹配し、羽や胴を銀金貝と銀蒔絵とし、尻は螺鈿で表し、頭に朱の粉を点じる。全体の構図は、蓋甲の図様が身の長短側面に続く構成である。底裏は濃梨子地で、左下方に「安永四年己未八月日/観松齋桃葉造(花押)」の刻銘がある。
蓋裏と身の内側は、総体をごく粗い刑部梨子地とする。蓋裏には、金銀の薄肉高蒔絵で遠景に朝日山を望む川の流れと葦を表し、身の底には川の流れを思わせる流水を金銀の薄肉高蒔絵で配する。

(硯箱)総高5.3㎝ 縦26.0㎝ 横24.0㎝
(料紙箱)総高16.5㎝ 縦41.0㎝ 横33.6㎝

1具

千代田区千代田1-8

重文指定年月日:20250926
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

本作は、宇治川に蛍が飛び交う意匠を、高蒔絵を主とする技法で加飾した料紙硯箱である。初代飯塚桃葉(生年不詳〜一七九〇)は、徳島藩主蜂須賀家に抱えられた。お抱え蒔絵師として、注文主の庇護のもと材料など経済的な制約にとらわれず、最高の技術で注文に応えようとする桃葉の姿勢がうかがわれる。桃葉の高蒔絵の代表作であるとともに、江戸中期の蒔絵における装飾性の到達点を示す作品の一つとして重要である。

関連作品

チェックした関連作品の検索