鉄塔模型
概要
1996年、美術家・川俣正により炭鉱町でのプロジェクトが構想された。1978年よりIAF研究室を主宰していた山野真悟と相談するなかで、旧産炭地である田川市での発表が決まり、以後約10年間、春と秋に田川市に滞在し、市美術館でドキュメント展としてその成果が発表された。
川俣は、近代化(モダニズム)を支えてきたエネルギー資源をめぐる社会問題が、現在においてもなお継続しているという視点のもと、約10年にわたりこの地で思索を続けた。そこでは、地域住民やかつて炭鉱に関わっていた人々とともに一つの造作物を制作することで、現在を異なる視点から逆照射することが試みられていた。
本作は、その過程で制作された鉄塔である。塔とは、記念碑的象徴であり近代の産物であると同時に、人間の造形力への憧れを体現する存在でもある。しかし現代においては時代錯誤的とも捉えられるその形式を、あえて実践することが試みられた。
タワー建設に向けた第一歩として制作された本鉄塔模型は、かつて田川市に存在し、閉山後大牟田市へ移設されていた三井三池炭鉱港沖四山坑の立坑の解体に際し、その一部を用いて約1/20スケールの鉄塔として再構成された。この約10年におよぶプロジェクトの象徴であった鉄塔は、2006年に市美術館へ移送し、設置された。
なお、このプロジェクトでは、最終的に形として残る作品を目的とするのではなく、関わった人々がそれぞれに振り返り、思索し、異なるかたちで未来へと展開していくこと自体に意義が置かれていた。
その後川俣は、三笠市や岩見沢市を拠点とした炭鉱に関わるプロジェクトを継続している。また関連する動きとして、2008年に東京都現代美術館で開催された川俣正の個展[通路]展を契機に、アーティストやミュージシャン、クリエーターらによる炭鉱の研究・調査・ミーティング集団「コールマイン研究室」が発足した。
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